専務理事 齋藤勇太が語る 協会という立場から目指すもの vol.1
仲間
2020年6月6日
 一般社団法人日本フライングディスク協会では、HALF TIMEでの人材募集を2019年に開始しました。中央競技団体(NF)の活動をより深く知っていただけるよう、協会の立場で活動する個人にフォーカスし、意識している課題や取り組みについて、広報担当者がインタビュー形式で掲載します。

 今回は、協会の専務理事を務める齋藤勇太さんにお話を伺いました。

 

 

取り組んでいるテーマについて

 

――齋藤さんが協会という立場から取り組んでいるテーマは何ですか?

 

 誰かが何かを「やりたい」と思った時に、それが叶えられる環境を自分自身で選択できるような機会を増やしていくことです。誰かに言われたからではなく自分自身で決定をするという点では、フライングディスクの「セルフジャッジ」の概念と似ている気がします。そうした自己決定をサポートするために、まず「自分が何をしたいのか」を見つけること、そして「身を置きたいと思える環境の選択肢を増やしていくこと」の2点において、フライングディスク協会という立場を通じて貢献できたらと思っています。

 

 

――協会という立場として、どのような考え方を大切にしていますか?

 

 協会運営の中では、その人が求める「報酬」と、関わる立場で得ることのできる「報酬」がマッチしているかどうかを大切にしています。この場合の「報酬」という言葉には、経済的報酬以外も含まれます。例えば、楽しい気持ちや誰かの役に立っているという感情的な報酬を求めている人もいれば、フライングディスクを通じて広がるコミュニティに参画しているという社会的報酬を求める人もいます。

 

 そういった自分にとっての「報酬」は、様々な関わり方を体験してみる中で発見できるもので、「自分が何をしたいのか」「それをどのような環境の中でどのように実現したいのか」というような「自分の軸」に繋がることだと考えています。

 

 そのために、協会という立場を活用して、できるだけ多くの人に対して、様々な角度からフライングディスクと関わってもらう機会を作りたいです。個人的には、自身が「楽しい」と感じるものを見つけられる人が増えたらいいなと思いますし、フライングディスクがその「やりたい」や「楽しい」といった気持ちに気付くきっかけになればいいですね。

 

 

――選べる環境や役割の選択肢を増やすという点に関しては、どのような心がけをしていますか?

 

 人の流動性が高い環境を作りたいと考えています。一例ですが、所属チーム間の移籍制限をしない規則を適用しているので、拠点とするチームはあっても、別チームでプレイをする機会が多く生まれます。今週は対戦相手だけれども、来月はチームメイトとして一緒にプレイできるような環境になっています。

 

 競技者としてのチーム間の流動性だけでなく、競技者や運営者、指導者などの「役割」を横断した流動性も意識しています。競技者がメインだけれども、ある時は大会スタッフとして関わるなど、他の役割を経験すると、どの役割の人も「アルティメットを一緒に楽しみ、一緒に創っている」という認識が生まれてきます。スポーツが普及振興するためには、この考え方を1人でも多くの人が持っていることが重要になってきますので、チームや役割を横断するという概念を積極的に組み込み、人の流動性が高い環境を目指しています。

 

 ただし、あるチームや役割を存続させるためには、個人の自由を尊重するとともに、その環境維持への貢献も必要だという認識を広めることも重要です。チームにおいても、役割においても、ある目的を共有する人達が集い、ある時は離れ、ある時はその環境の維持に貢献する。ある意味、ひとつのプロジェクトを作っている、というような状態だと思います。この流動性の高い状態は「複業」に近い概念かもしれません。ひとつの環境に留まらずに様々なチームに所属し、違った役割を経験することで、より広い視点から物事を考えられるようになり、そのような人が増えることで、よりよい社会に繋がると思います。

 

 フライングディスクに関わる役割には、運営者や競技者をはじめとして、指導者や応援者、支援者など様々なものがあります。この企画で後に登場するスタッフからも話があると思いますが、運営者の内部でもそれぞれ違った役割があります。そうした役割の定義をもっと広げて、様々な角度からフライングディスクに関わる人を増やしたいと思っています。自分自身の「報酬」とマッチする役割を見つけ、ぜひ一緒に色々な方と環境づくりに携わっていきたいです。

 

 

――齋藤さんにとっての「報酬」とは何ですか?

 

 私にとってのフライングディスクと関わる魅力は、ディスク1枚で全国の人と繋がることができるコミュニティですね。北海道に行っても、沖縄に行っても、それこそ海外に行っても、フライングディスクという共通言語で交流ができます。そうして、人の輪が大きくなっていくことが魅力ですね。おそらく、「フライングディスクが好きな人が好き」なのだとも思います。一般的に、競技自体の魅力はスポーツの大きな要素ですが、フライングディスクは、コミュニティとしての魅力も大きいスポーツだと思います。

 

 

これまでの取り組みと、これから

 

――具体的に、齋藤さんはこれまでどのような取り組みをされてきたのでしょうか?

 

 まず取り組んだのは、フライングディスク競技を正しく知るための情報整理です。ルールブックやSOTGの概念、競技ガイドブックやウェブサイトなどを、情報基盤として整理しました。競技の魅力を外部に伝えるための共通言語をつくるという点でも、この作業はとても大事だったと思います。

 

 その上で、現在競技に取り組んでいる方の満足度向上を目指して、大会中の写真や映像の制作配信や、ライブ配信の導入もしました。競技者の視点では、自分のプレーを後で見返すことができたり、家族に応援してもらえたりと、この競技における自信に繋がっていると思いますし、運営者の視点では、誰かの満足度を作っているという自信を大会スタッフに感じてもらえていると思います。

 

 一人ひとりの中にこの自信を生み出していくことは、競技の普及振興の観点でも、とても重要なことです。エンターテイメントにおける体験価値と同じ視点になりますが、協会という立場が担うことができるのは、半分程度までです。残りの半分は、競技者や指導者などの様々な役割で活動する方ひとりひとりが担う必要があります。この競技の魅力や価値を高め、競技普及を進めるためには、実際に競技に取り組んでいる人から滲み出る楽しさや満足感が、最も効果的です。その観点からも、この瞬間に競技に取り組んでいる方の満足度を高め、ひとりひとりが他の人を巻き込みたいと思えるような環境づくりを後押しすることが、協会の立場としてできることだと思っています。

 

 もうひとつ、フライングディスクが持つ社会的価値を研究するということも、継続的に取り組んでいるテーマです。SDGsやLGBTQなどの社会課題に貢献できる部分はあるか、大会が開催される地域の活性化に繋がる取り組みはないかなどを、常に研究しながら動いています。

 

 

――そうした取り組みの現状と、これからの課題を教えてください。

 

 現状、情報整理や役割の拡大は日々進んできていると感じています。ただ、ひとつひとつのプロジェクトはまだ日が浅いものもあり、それぞれの施策を経営資源(人材・物品・資金・情報)の観点からどのように継続させていくかは常に課題です。

 

 

――これから齋藤さんが目指すものは何ですか?

 

 フライングディスクに関わるための役割を増やし、それを担う人材がいるという状態をどう継続させていくか、そしてその継続性から生まれるフライングディスクの社会価値をどのように向上させていくか、様々な方と一緒に考え行動していきたいです。

 

 そのためには、誰かが何かを「したい」と思うための様々な「報酬」の提案が必要です。特に、フライングディスクという競技のあり方に対して課題感を持っている人にどんどん話を聞きたいですし、より多くの人に運営者という立場で関わってもらいたいと思っています。

 

 理想としては、全ての人が、自分が望む環境と望む役割でフライングディスクに関わっている状態がベストだと思っています。その中に、チームづくりやチーム維持といった他者のために必要な役割も含まれていて、自分が好きなことをやっているだけで他者が楽しむ環境が広がっていく、といった循環を作っていけると、とても強いコミュニティが実現すると思っています。そのような意味においても、協会が全てをリードするのではなく、ひとりひとりが自分の納得感とともに、この競技自体やフライングディスクのコミュニティを作っていけることを一緒に目指していきたいです。

 



 

齋藤勇太 / Yuta Saito

一般社団法人日本フライングディスク協会専務理事。

埼玉県出身。国際基督教大学(ICU)在学中に日本で開催された世界大会に事務局として携わり、2013年春に新卒入社。2015年より現役職。世界連盟専門委員や国際大会運営責任者などの国際的な活動から、全日本選手権運営や地域普及活動などの国内活動まで、幅広くフライングディスク競技に携わる。2010U19アルティメット日本代表。世界フライングディスク連盟SOTG委員。アジア・オセアニアフライングディスク連盟ユース普及委員長。WFDF2019アジア・オセアニアビーチアルティメット選手権大会運営責任者(2019年/和歌山県・白浜町)。ワールドマスターズゲームズ2021関西フライングディスク競技運営責任者(2021年/京都府・宇治市)。

最新の
スポーツビジネス情報を
お届けします。
HALF TIME 無料会員登録特典

・イベント先行案内
・最新スポーツビジネス情報
・スポーツ関連求人案内

HALF TIME 無料会員に登録